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【持ち主】ナディル=コウガ・ムバラク・カリム

【武 器】紅虎(べにとら)

「ホゥ、なかなかの業物があるではないか。
長さも重さも丁度良い。それに……美しい刀身だ。
気に入った。貴様、吾のモノになれ。
暴れたいのだろう?
共に来るのならば、存分に揮ってやろうぞ」

「異国の地からはるばるよう来たなぁ、兄ちゃん!
どないや、ワシとこれから一戦――……お?お?
なんや、この紅虎の価値に目ぇ付けるとは、若いのになかなかよう分かっとるやないか!
それに、ワシを扱えるだけの実力も備えとるようやしのぅ……。
……よっしゃ、決めたで!
ワシも永いこと土の中で燻っとってなぁ、えらい退屈しとったんや!
この大太刀 紅虎!
兄ちゃんと盃、交したろうやないかい!」

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【持ち主】ズベン・エスカマリ

【武 器】アストレアの長杖

「そこの。そこの杖を持った者。そう、君だ。
君からは星の力を感じる。とびきりのだ。
俺は、俺の力になるものを探している。
その星の力、俺に授けてはくれないか?

――星の乙女よ、
砂の民リブラエ・ズベンの子、エスカマリが、
高き光の空に願う。
大いなる星のしずくを、どうか、この手に……!」

「ああ、私を…私を選んで下さるのですね。
分かりました。今より貴方を主とし、お仕えいたします。
さあ、杖を手にしてください。

ーー砂漠の王子よ、貴方に星の力を授けます。
煌めく光が導き手となり、その手に希望を与えることでしょう。

私はいつ如何なるときもお傍におります。
いつか、また、別れに悲しむ日が来るとしても、
主と共に生きることが武器として…私としての幸せなのです。

貴方に夜空と星の祝福があらんことを…。」

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【持ち主】リアム=ヴォールファート(Liam=Wohlfart)

【武 器】妖仙大鎌 毒辣咬(どくらつこう)

 「やぁ、待たせたね。
 待ってない?まぁまぁ‥お手をどうぞ、どくらチャン♪
 未だ少ーしワタシの死顔は見せてやれそうにないけど、
 2人で共に最高の終幕(フィナーレ)を飾ろうじゃないか!」

「残念ね。私の持ち主はダンディなイケメン以外はお断…
 あらやだ、結構可愛い子じゃない。ふふふ、今までにいないタイプの持ち主ね。
 いいわ、楽しそうだから最期(フィナーレ)まで可愛がってあげる。

―死が二人を分かつまで―

寂しくなっちゃうから、あんまり無茶して早死にしちゃわないでね?りあむチャン」

どくらは浮き立つ気持ちを隠しきれず尻尾をクルクルとまわすと
新しい主の後ろ、するすると身を寄せるように付き従った。

【持ち主】覇月(はづき)

【武 器】懸濁(ケンダク)

おうおゥ、居るではないか強き者が。力も心も誠に芯が通りよる。良い女じゃァ!
丁度長物がえェと思っとったァとこじゃけェ。この際倒してそいつを貰って―――
……あ?お前さんがこの武器の付喪がか。はー…そりゃァ失礼をした。
呪いなんざァ気の持ちようや、少なくとォも今儂が言えるンは……
(傘を横に起き、その場に座る。目はじっとその瞳を捉えて高々と声を張り上げ)
今は"禊屋(みそぎや)"の名を使ィて!その呪い、薙刀と女子に憑きし呪を貰い受ける!
なァに、心配はいらん。儂ァとっくの昔に自分の死ィとはおさらばさせられとう。多少の呪いじゃ死にゃーせん。
それにこの城は狭すぎよう。どうだ?儂と旅に出る気はないか。世界を見る旅にお前さんが居たら楽しかろうてな!

呪いを身に受けた時に真名を捨て、渦巻き濁る憎悪と執念のまま「懸濁」と名乗ってしまった…この私を、拾って下さるのか?
とうの昔に枯れ果てた筈の泉から温かい思いがこみ上げ両の目からこぼれ落ち
足元で蠢いていた髑髏も身にまとう闇も、男の力強い眼差しと声に溶けて消えた。

新たな名を授けてくれた主をまっすぐ見つめ、それから正座し薙刀を膝の前に。指を付き深々と頭を下げる。
懸濁改め禊屋「この名前、しかと拝受致しました。お望みなら地の果てまで喜んで参りましょう。我が主覇月様」

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【持ち主】イルミナート・スフォル

【武 器】ルインズフェイト

「ほうほう、これはなかなかいい感じの武器じゃないか…っておお?武器が人になった?意思を持つ武器と言う訳か…。気に入った!そこーの君ぃ!私の物になろうじゃないか!
嫌なんてつれない言葉はキコエナイぞ!」

周りに人がいないのを確認しておちゃらけた空気を一気に張りつめさせた

「私にはね、力が必要なんだよ。ね、だから私の手元に来てくれ」

そう言って来ないとは疑わない態度で手を伸ばした

「これはこれは、また元気で明るい若者だ。
 俺を手にしようだなんて……お前は破滅を恐れないのか?
 …………違うな、それ以上にお前は力を欲している。先の破滅などお前は見ていない。
 
 面白いな。いいだろう、お前の物になってやる。
 お前の望むままに、俺は力を振るおう。
 その先に何があるかはわからないが……俺は常にお前の力となると此処に誓おう」

伸ばされた手を取る。
しっかりと握り締め、彼は不敵に笑う。

「一度手にしたからには……手放すことは許さんぞ?
 イルミナート・スフォル、お前の運命、俺が見届けよう」

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【持ち主】リタヴィア・ドヴェルグニアン

【武 器】魔剣ダインスレイブ

「あなたは求められたいの? 魔剣ダインスレイブ。大いなる力。
 ならば私が求めてあげる。私の元に来なさい。
 私の盾となり、私の矛となり、その力を、私のために奮いなさい……!」

「求められたい?そりゃあな、誰にも使われないでいたら俺だって錆びちまう。
 だが……アンタに俺が使いこなせるのか?その細い腕で俺を振るえるのか?
 そして何より、血に濡れる覚悟があるのか?
 俺は血塗られた魔剣。その覚悟がなけりゃ扱うに能わず。

 ……なんて、な。
 アンタが背負ってるものからしたら、んなもん改めて聞くこともなかったか。
 いいぜ、アンタの盾、アンタの矛になってやる。この力はアンタのために奮ってやろう。
 リタヴィア、今からアンタが俺の主だ。……俺を、失望させるなよ……?」

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【持ち主】兵馬(ひょうま)

【武 器】鐵(くろがね)

「やれどんな恐ろしいものかと思いきや幼い子供じゃありませんか。それでいて見事な一振り。
 1人が寂しいのならうちにおいでなさい。
 趣味といっても刀をいじるだけの冴えない男ですがね。その切れ味を存分に活かしてあげましょう。
 ああ…それとも…少女なら団子の方が良いんでしょうかねぇ?」

「ひうっ!……あ、あ、ご、ご、ごめんなさい!
 あの、えっと、その、くろ、びっくり…し、て。
 ひとりは、いや、なの。でも…ひとを、きず、つける、のも…」

(すこし目線を落としてもごもごと言い淀む。
 暗い顔をしたのも束の間、一つの言葉にぱっと反応して)

「だんご…おだ、んご?いっしょに、たべてくれる、の?」

(ぴこぴこと白い耳が揺れて。ふにゃりと笑みを浮かべた少女。
 ぐしぐしと涙を拭うと、小走りに近寄りくいっと袖を掴んだ)

「あの、あの、くろ…いっしょに、いく!
 あるじさま、まもる…から。いっしょに、おだんご…たべ、たい!」

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【持ち主】綴屋 千郷(つづりや ちさと)

【武 器】月華派 眠り猫

……扇、か。武器としても、普段使いにも申し分ない…名前も含めて、気に入った。
良ければ手元に置きたい。扇として、武器として。その優美さは綴るに値する。
と、いう訳でお前の経歴を聞きたいんだが……先ずはその足元の何某かをどうにかするのが先か?

うわっ、こんなときになに?えっ、僕を手元に?
あぁ、貴方は有名な九家の綴屋さんか。
僕が優美?お世辞を言っても何も出ないよ。
(と言いながらまんざらでもなさそうに)
うん、何故かなあ、貴方からは惹かれる香りがする。
だから、僕を存分に使ってよ。
詳しい経歴や自己紹介は…、
二人でこの足元のをやっつけてからだね!

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【持ち主】クロエ・アンリエット・マラルメ

【武 器】小花(こばな)

「へえ、あなた日本のパイプなの?素敵!人気があるのよ、ジャポニズムって。
どう?私の所に来ない?あなたみたいな美人なら大歓迎だわ。一緒に舞台に立ってもいいし、別の仕事も手伝ってもらいたいわね。

あら、男に媚びる女はお嫌い?
うふふ、でもね、表の舞台は自分のものだ、という顔をしている男達を、裏からこっそり操るのって、結構快感よ。

私の戦いは騙すことで、武器は隠し持つもの。
私の踊りは、相手を躍らせるためにあるの。
ここも悪くはないけど、そういう戦場に興味はないかしら?」

わちきのことを、素敵、と?
この呪いに縛られた、わちきを?

廓の中のことしか知らず、わちきの持ち主たちを捨てて去った男を恨む、
それでしかこの身を保てない、そうわちきは思うておりなんした。 
わちきの持ち主だった花魁たちはみな、
そういう死に方で消えていかはりました…。

でも、主さんの考え方を聞いて気持ちが変わりました。
主さんと一緒に男たちを操って踊らせてやりたい、
主さんとならばそれができる、そうでござりんしょう。

主さん、不肖小花をどうか連れていっておくれなんし。
ああもう、郭言葉も必要ない…、小花は生まれ変わります。
主さん、舞台でも戦でも、一緒に相手を躍らせてやりましょうね。

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【持ち主】朧 雪之丞

【武 器】氷零刀『修羅雪』

「刀が人型を取り喋るとは、これまた珍妙。
……某か、某が何者かと問われると、空虚を埋めるモノを探し歩いている流浪人だろうか。名を問われているなら朧 雪之丞と申す。
敵というつもりはないが、今はまだ死ぬわけにはいかぬ故、嗚呼どうだろう、これも何かの縁(えにし)、ひとまずよければ其方の事情なども聴かせてもらう訳にはいかまいか?」

ふと、修羅雪に声を掛けてくださったのは一人の殿方・・・名は雪之丞様。
敵ではないと仰る貴方様・・・どこか虚ろな口調だけれども、嘘偽りは無ひやうです。

「修羅雪は、人斬りの刀です・・・仇討ちとはいえ、多くの者を斬り過ぎました。
 今も・・・こうして雪之丞様と言の葉を交わす今も・・・・・・嗚呼・・・。
 先の主様の怨恨が・・・殺せ、殺せと・・・修羅雪に囁き続けているのです・・・。」

話の最中、凍てつく殺意が再び修羅雪を包んでいく・・・その瞬間。
貴方様が仰った『縁』といふ言葉が引っ掛かる・・・何故、何故こんなにも・・・
何故こんなにも温かい思いが伝わってくるのでせう・・・会ったことなど無いのに
何故、雪之丞様を呼び慕う者たちの声と笑顔が想ひ浮かぶのでせう・・・。
気が付けば涙は流れ・・・呪詛の如く繰り返される怨みは聞こへなくなっていました。

「深山の冬に抱かれて・・・雪と氷をこの身に宿すは氷零刀、銘は『修羅雪』・・・。
 雪之丞様・・・修羅雪はこの身果てるまで、貴方様にお仕えしとうござひます・・・。
 どうか修羅雪を・・・貴方様の新たな縁の一人に加へてくださりませ・・・!」

流し尽くした涙に目元を赤くし、修羅雪は微笑んで座礼をするのでした・・・。

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