【秋】個人ペア成立③

個人成立ペア-3-

No.21

【持ち主】寧子(ねいこ)

「アンタこんな所で何してんだい？
アンタだよアンタ。いや、隠れてるつもりかもしれないけどね、全然隠せてないからね！
急にごめんよ。やたら思い詰めたみたいな顔が気になっちまって……。
アンタ、良かったら胸に抱えてるもん、私に話してみないかい？
ほら、旅は道連れ世は～って言うだろう？こうして会えたのもご縁ってやつさ！

ふーん。“自分の存在意義が分からない”ね。そりゃあ、分かる訳ないさ！
いいかい、そんな事は生きて生きて必死に生き抜いた奴にしか分からないのさ。
こんな世の中だ、怪異だ災異だ何だかんだと人は死んでいく。悲しいけどね、残されたもんはそれを歯をくいしばって耐えて、死んでったもんに顔向けできるように、まっとうに生きていくしかないんだよ。
死んだアンタのご主人様も、さっきみたいな顔は望んでないと思うよ。

良かったらさ、私について来ないかい？行くとこないんだったら、仏殿かうち(実家)で面倒みてやるさ！なぁ、どうだい？」

【武器】月華派不忍（しのばず）

「ふむ…隠れ蓑の術、見破られてしまったようでは仕方あるまい。
私が、思いつめた顔をしている…？まさか元より物思わぬ武器であった私が、人よりそのように言われる日が来ようとは。
折角人としての姿を得たのだ…コレも一興、我が心中を論じてみるのも悪くない

・・・

”生きて生きて必死に生き抜いた奴にしか分からない”か…面白いことを言う。
数多の生物の中でも様々な死生観を持つ人間ならではの発想というところか。
元々武器であった私にその概念は難しいが―そなた等のうちに、或いはその答えも見出すこともあるのかもしれぬな…

―どのみち死ぬ事も生きる事もままならぬ身だ。　今日よりそなたの武器として従者として―　その解、見極めさせていただこう」

No.22

【持ち主】エオリティア・ウルカヌス

「まぁ、あなた、お顔はどこへ遊びに行ったの？
うちのこと、見えてるのかなぁ？
こほん、うち、エオリティア・ウルカヌスって言うんだ、よろしくね
あなたとっても不思議な雰囲気、まるで、うちの国の乙女たちが使っていた仕事道具みたい
硬質なのに、繊細で、かと思えば柔らかく包み込むような……それに、ねぇ、いま鍛え直しって言ったけど、鍛冶関係のお仕事をしているのかな？
うちもね、鍛冶屋さんなの、まだ成り立てなんだけれども、研ぎが下手で……
よければ、あなた……ううん、先生、うちに研ぎを教えてくれませんか？
ひとりで何でも出来るようにならなきゃいけないんだ
研ぎも完璧に出来たら、うち、焔と風を従える炉の神様にだってきっとなれる、だから、よろしくおねがいします！」

【武器】Mr.ファイン

「顔か。そんなものはずいぶん昔に磨耗してしまったよ。我が身を削りて武器を鍛えるのが砥石の天命。顔が見えぬとは吾輩に対する最上の褒め言葉だ…けっこう、けっこう。
（外からは窺えぬ双眸にてその顔をみつめ、小さく荒れた両の手をとって）エオリティア・ウルカヌス。非常に良い名だ。そして、君の瞳にも、手指の先にも、寸鉄を鍛える神の火が宿っている。
よいか、エオ。研ぎとは、自らの心を、感性を刀身に宿し、大地より生まれ出でし土と水の妙によりて研ぎ澄ますことなのだ。吾輩の持てる全ての知識、全ての技術を君に授けよう。
いつか、君が真の名匠となるその日まで共に歩まんことを誓う」

No.23

【持ち主】ベンジャミン・ブラッド

美しい娘かと思いきや小さなコウモリ、手のひらに蹲ったら苦無に化ける。
ああ、そうか。苦無の精霊ですね。
私には分かる、その手は働き者の手。機敏な動き…何よりも、その金の瞳に魅了されてしまったようだ。
申し遅れました、私はベンジャミン・ブラッド。生物学の研究のため野山を歩き回り時には危険な目にも遭う。
どうか、旅のお供になって下さい。

【武器】天鼠

「異人さん？旅の異人さんに、てんが入用なの？だったらどこへなりとお供しますわ。小さくても、なかなか役に立つのよ。えへん。
そうそう、この辺りの野山のことなら、なんでもてんに聞いてくださいな。オオムラサキの群れる雑木林も、カモシカやカワウソの寝ぐらも、何でもおまかせあれ。
お昼寝にちょうどいい洞窟もね。
だから、その、お胸の内ポケットとやらを、てんの指定席にしてくださいな、旦那さま。懐やら袂やらと違って、てんにお誂えむきにぴったりですもの。
自分の居場所が、決まってるって素敵なことでしょ？風の向くまま、旅路の空であればなおのこと。旦那さまの胸の鼓動を聞きながら、その高鳴りに、まだ見ぬ広い世界のあめいじんぐを感じるのよ」

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