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囚われたそれぞれの武器の持ち主達も無事救出され


賑やかだったハロウィンのおばけ達の喧騒も
思い思いに動く人形達の笑い声も
死霊のざわめきもなくなった静かな城

その再び静寂が音連れた城に一つの靴音が響く…

 

「世界が、私が、崩壊する音が聞こえる______」

 

月夜が柔らかく差し込む。その月の光を見つめる瞳は寂しげに揺らいでいた。


「この世界と共に朽ちるのもまた一興
 アンネリーゼ。この死の先に逝けば君に会えるだろうか______

月の光を掴もうと手を伸ばし握りしめた拳には何もつかめることはなく…。
一人しかいなかった空間にもう一人の足音が聞こえてくる。

 

「______会えないわ。」

 

向かってくるのは誰だっただろう、私の脳で認知できていないのか顔がよく認識できない
シラノは目を細めた。

 

「私はここに居るのよ。シラノ、貴方が私を否定し続けているだけ
 私はずっと貴方の隣にいたわ。
 この魂はこの武器に宿ったの。宿したのは貴方自身。
 やっと人型になれて貴方の隣にずっと居れると思ったのに
 貴方は私の存在を否定した。その気持ちわかるかしら?

 名も与えられないまま私は自我を保つのに苦労したわ。
 今まで保てていたのは貴方が一途に私を思い続けていてくれたから、
 だからいつか貴方は私を見てアンネリーゼだと、認めて、理解してくれるのを

 期待していたの。
 でももうやめたわ。
 貴方に遠慮するのをやめたの。______」

ゆっくりとシラノの前へと近付いた彼女はシラノと向かい会い、

右手を振り上げ自分を認識しないその目に、顔に、

勢いよく平手を振り下ろした。

 

静かな城に小気味良い音が響く

 

「ッーーー。何を…。無礼な…。」

「無礼なのはシラノよ。いい?貴方ってば自分勝手で根暗で寂しがりやで周りが見えていなさすぎるどうしようもないヴァンパイアなの!救いようがないわ。ヴァンパイアの力だけが強い子供!あとしつこい!最初に出会った時だってそう!根暗な貴方に意気地なしねって言っただけで泣こうとするんだもの。あの時から何も変わってない。生きた年数だけ長くても成長しなのね。今まで遠慮していた私が間違っていたわ。でも見つけてもらいたいっていう乙女心出したっていいじゃないの。でももうあの頃から時代は変わったの今は肉食系女子の時代だもの私も流行りに乗って…あら、話が逸れたわね。言いたいこと言ってると止まらなくなるのね、我慢しすぎたせいかしら。」

息継ぎは一体どこでしているのかと疑問に思うくらいまくしたてる彼女に
ただただ目を丸くしているシラノだったが
久しぶりの頬の痛みと油断していたせいか口の中に広がる血の味
そして物怖じしないその鋭利な言葉の羅列に
昔経験したアンネリーゼとの出会いを彷彿させ白黒だった世界に鮮やかな朱の色が広がった。

「アンネリーゼ。君はアンネリーゼ、逃げないのか?私が怖くはないのか。」

 

「最初から貴方のことなんて怖くはなかったわ。執念は恐ろしかったけど」

 

地響きが酷くなり、城が揺れ崩れ出す。以前起こった大災害と同じように…。

 

「ありがとう、最後に君に会えて私はもう他の世界へと君を探す必要がなくなった
 君とこの世界の終焉を一緒に迎えられて私は幸せ者だな」

 

「当然のように私はシラノと一緒にいることになっているのね。」

 

「それがアンネリーゼだからな」

 

「そうね、間違ってはいないわ」

 

そう言って二人でフッと笑いあう。場にそぐわないのは重々わかってはいるが
アンネリーゼに会えたというその満たされた心で他にはもう何も考えられなかったシラノであった。

 

 

ぞうして静かに二人寄り添って崩れていく城の瓦礫に埋もれていくのを待っていた頃


 

「おい、まだお前の願いを叶えてなかっただろうが」

 

その声と一緒に宙から今回の計画の発端であるアルフリートと
この城にやってきた武器の中でも禍々しい気を放っていた扇の武器である紫扇が姿を現した

 

「私の願いは今叶った。いや、気が付かなかっただけでもう手に入っていたのだ。
 アルフリートよ。もういいのだ。私たちは静かに______」

 

「それはいけません」
 

シラノの声を遮るように笑みを絶やさず紫扇は言い放った。

 

「お前…。まだアイツが話している最中だろうが、人の話は最後まで聞けとお優し〜い主さまに教わらなかったのか?」
 

「うるさいですよ黙りなさい、そこの負け犬。犬は犬らしく鳴いていればいいのです。
 負け犬でさらにその方と結んだ契約を守れないなんてアナタそれでも聖剣ですか?情けない」


「なっ、ハァ?随分な言い草だ。私は聖剣としての誇りは失ってなどいない。だから契約通りそこのヴァンパイアは連れてくるし迷惑かけたお詫びに他の奴らも連れてくる優しさを見せているだろ。大体…」


「話。長いです。尺がないのですよ。長文になると読む人がげんなりするでしょう?」
 

「だからお前はメタ発言をするなとあれほど…」
 

「あれほど?今回初めてなのでは?」
 

「・・・まあいい、これ以上は尺がないんだろ。
 シラノ・ルヴァニア・ブラッドよ。契約通り聖剣アルフリートはこの崩壊する世界から其方達を連れ出そう」

「そう…。シラノ、もうこれは大人しく朽ち果てることすらできないみたいよ。
 それなら一緒にまだいられるわね。私はシラノさえいればどこでも構わないの。貴方は?」

その答えはもちろん______

 

「ああ、私もだよアンネリーゼ。共に生きよう」


「アラアラ〜!せーっかくシラノパパが死ぬ気だったのに〜!!
 もちろんアタシも一緒に行くからね!私だって契約しれるんだから!!!」

そう言ってきっと一部始終を見ていたであろうキャンディ・ハロー・ウィンがやってきた


「さあ、いきましょうフェンモルプルグ城へ。私たちは貴方達を歓迎します。」

 

 


           -end-

紫扇 (秋).jpg

駆け足気味になってしまいましたがエピローグまで無事迎えられました

参加してくださった皆様、一緒に盛り上げていただきありがとうございます。

エピローグ後、中の人発表、そして個人募集がこの後ありますが是非最後までお付き合いいただけたらと思います。

​どうぞ宜しくお願い致します。

2018年10月20日 エピローグ終了

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